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<2025春季生活闘争スローガン> ONE TEAMで もっと賃上げ・生活改善 ―労働条件改善を加速させ、人財の確保・定着につなげよう― |
JRの責任産別であるJR連合は、加盟単組はもとより、労働組合に護られていないグループ会社や協力会社等の仲間にも想いを馳せて、以下の基本的なスタンスに基づき、全加盟単組がONE TEAMとなって2025春季生活闘争に取り組むこととします。
また、春季生活闘争は、職場討議や労使協議を通じて、組織強化・拡大や労使関係の充実を図る絶好の機会であることから、労使関係のあり方も論点となっている労働基準法改正の動向も意識しながら、労働組合の存在意義を高め、JR産業に集うすべての仲間のJR連合への総結集を呼びかけていきます。
なお、2025春季生活闘争を取り組むにあたっての基調については以下の通りです。
(1) JR産業の持続的発展のため、労使で危機感を共有し、人財の確保・定着の実現をめざす
@ JR産業が持続的に発展するためには人財の確保・定着が不可欠
これまで、長期安定雇用とそれに連動した一環処遇をJR産業の雇用方針の基調とし、雇用の安心感のもと、技術の錬磨や安全の追求に勤しんできました。その結果、JR産業は国鉄時代では考えられなかった成長を遂げてきました。
この間、少子・高齢化の進展や人口減少による社員数の減少、長引くデフレ経済における賃金の抑制と雇用不安、働き方に直結する法改正、技術革新による労働環境の変化など、産業を取り巻く環境は大きく変化してきました。
こうした時代の変化に柔軟に対応し、JR産業を支え、発展させてきたのは、まぎれもなく懸命に業務に従事してきた組合員であり、人財の確保・定着が産業の将来を左右する重要な課題であることを、改めて労使が共有しなくてはいけません。
A 雇用情勢が大きく変化する中、人財の確保・定着を実現するためには柔軟な対応が必要
上述したJR連合の経過とは裏腹に、「リスキリング」や「ジョブ型人事導入」等の必要性がクローズアップされ、2024年6月に閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針2024(骨太方針2024)では、三位一体の労働市場改革による成長分野への労働力移動の円滑化や中小企業における再チャレンジ支援、事業継承、M&Aの環境整備など、雇用情勢の激的な変化を標榜しています。
JR産業でも離転職などによる労働力移動の活性化が見受けられ、人財の確保・定着に向けては、組合員の勤労観や家庭観の変化、忌避される労働条件・就労環境の改善を踏まえ、キャリアステップを示すとともに、多様化・個別化するニーズを丁寧に汲み取って改善することで、自身の成長や働きがいを実感できる取り組みが不可欠です。
B 人財獲得に向けた採用競争力の強化が必要
激しい人財獲得競争の中、「採用」を経営の最重要課題に位置付けた労使の取り組みも求められています。人口減少による人手不足の環境下において、労働力移動も円滑化する中では、新規採用者のみで十分な人財を確保することは困難であり、グループ会社を含めて中途採用の拡大や外国人労働者の受け入れを推進する必要があります。
そのうえで、単に必要な労働力を確保するという安易な思想は危険であり、誰であっても産業を支え発展させ得る貴重な人財との認識のもと、多様な人財(女性・高年齢者・社会人・外国人・障がい者等)、多様な事情を抱える人財(育児・介護・治療等)のニーズを踏まえ、労働条件・就労環境の改善・整備に積極的に取り組む必要があります。
(2) 動き始めた賃上げの潮流に乗り遅れない賃上げの実現
@ 組合員の生活維持・向上のためには、社会水準並みの賃上げは不可欠
長期化する高水準の物価高騰が続く中、人口減少や労働力移動の円滑化などから人手不足・労働力不足が社会全体の大きな課題となっています。
2024春季生活闘争では、こうした環境を踏まえ、激しい人財獲得合戦の様相を呈し、国内では33年ぶりに5%を超える賃上げ(定昇含む)が実現しました。しかし、その内容を見ると、製造業などの経営が堅調な産業・大企業が、賃上げ水準を大きく引き上げており、国内の労働者の大半が所属する中小企業は5%に届いていません。
JR連合の2024春季生活闘争は、連合が目標に据えた5%以上の賃上げには及びませんでしたが、JR各単組、グループ労組ともに定期昇給相当分を含む組合員ベースの加重平均では4%台と、過去の実績と比べると大きな成果を収めています。JR本体や経営の堅調なグループ会社が賃上げ水準を大きく引き上げた一方で、経営体力差によりJR本体の上場4社と非上場3社の間で格差が拡大したほか、グループ会社の中では賃上げ幅が僅少な水準に留まったところやベースアップを見送った労使も一定数存在します。
2024春季生活闘争の後も、高水準の物価高騰は継続しています。国内経済はおよそ30年にわたり成長の機会を逸してきましたが、連合をはじめ、政労使は、累次の春季生活闘争における成果を足掛かりとして、賃金・経済・物価の好循環を安定した巡航軌道に乗せ、経済成長の新たなステージを定着させようと訴えています。当然ながら、JR産業の維持・発展のためには、こうした社会の流れに乗り遅れる訳にはいかず、循環の起点となる賃金向上を不断に追求していかなければなりません。
<参考> ◆ 2024春闘結果 (JR連合賃上げ分は、定昇相当分を2%と仮定した推定値) ○ JR7単組 ------------------------- 4.96%(定昇含む)、2.96%(賃上げ分) ○ JRグループ労組連絡会 ----------- 4.08%(定昇含む)、2.08%(賃上げ分) ○ 連合集計結果(全体加重平均) ---- 5.10%(定昇含む)、3.56%(賃上げ分) ○ 同 (中小組合) --------- 4.45%(定昇含む)、3.16%(賃上げ分) ◆ 消費者物価指数(2023年全国平均)総合 ------------------------ 3.20% ◆ 最低賃金引上率(2024年全国加重平均)------------------------- 5.10% |
A 支払能力論を払拭し、賃上げができる基盤整備にこれまで以上に取り組む
長期にわたるデフレにより、JR産業内でも“賃上げは困難”との考えが蔓延し、大きなステージ転換の波が訪れた昨春闘でも賃上げに消極的な企業が見受けられました。JR産業は、発足当時からJR各社を中心とした自助努力による生産性向上、コスト削減、関係者との連携などにより経営を改善しながら発展を続けてきましたが、少子・高齢化、人口減少などによるご利用者の急激な減少などにより、収入を大きく伸ばすことができませんでした。グループ会社においても、特に業務委託を生業としている企業を中心に、JR各社と同様の状況であり、賃金や労働条件の改善に大きな投資を行う余裕はなく、従来の慣例を短期間で覆すことができませんでした。
“資金がないから投資できない”とする支払能力論では、これから到来する時代を生き抜くことはできず、前述した人財の確保・定着にも大きな影響を及ぼすことになり、産業の劣化や存続さえ危ぶまれる危機に陥る可能性もあります。“人財への投資に必要な資金をどのように獲得するか”といった視点に立ち、賃上げができる環境の構築・基盤整備が重要です。
JR産業の主たる収入減である鉄道運賃の価格転嫁については、収入原価算定要領の見直しに基づく運賃改定に対する理解促進や、価格転嫁が容易ではない環境の改善に向けて連合や交運労協とも連携した取り組みが必要です。そのうえで、昨年策定された「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」の適正運用を推奨することで、グループ会社の収支改善にもつなげなければいけません。また、適正契約の推進に向けて「パートナーシップ構築宣言」の普及促進にJR本体とグループ労使が一丸となって取り組む必要があります。
さらに、これまで同様の生産性向上やコスト削減の取り組みも引き続き求められますが、これらの取り組みは組合員の汗と涙の結晶であり、経営改善にも大きく寄与しています。組合員の努力が積み上げた利益を成果分配として求めることは当然のことであり、各社は組合員にこれまで以上に真摯に向き合う必要があります。
B 連合・交運労協との連携・共闘
連合は、11月28日に開催した第94回中央委員会で、2025春季生活闘争方針を決定しました。2024闘争での成果を踏まえ、慢性デフレに終止符を打ち、動き始めた賃金・経済・物価を安定した巡航軌道に乗せるとともに、すべての働く人の生活向上を図り、新たなステージを定着させるという基本スタンスを示しています。また、「賃金も物価も上がらない」という社会規範(ノルム)を変えるためにも、賃上げの広がりと格差是正、適切な価格転嫁・適正取引の徹底を訴えています。賃金要求指標パッケージでは、経済社会の新たなステージを定着させるべく、全力で賃上げに取り組み、社会全体への波及をめざすことなどから、「全体の賃上げの目安は、賃上げ分3%以上、定昇相当分を含め5%以上、中小労組などは格差是正分(1%)を加えた6%以上を積極的に要求する」目標を設定しています。
交運労協は、12月6日に開催した第3回三役・幹事会で2025春季生活闘争方針を決定しました。交通運輸・観光サービス産業にとって人材の確保・定着・離職防止の取り組みは待ったなしの状況にあり、魅力ある賃金をはじめとする訴求力のある労働条件が必要との認識のもと、交通運輸・観光サービス産業の持続的成長を担保しうる人材確保に向けた闘いと位置付け、「産業の基盤たる人材の確保」「拡大する産業間格差の是正」「物価高騰に対する実質賃金の確保」「賃上げの原資となる価格転嫁の推進」「産業内の規模間格差の是正」という5つの視点に基づき闘うこととしています。具体的な賃上げ要求については、定期昇給および定期昇給相当分(一人平均基本給の2%)の確保を前提に、実質賃金の確保と産業間格差の是正を図る観点から、4%を中心とする賃上げ要求を掲げることとしています。
(3) すべての仲間の想いを包摂し、あらゆる「人財への投資」を実現する
@ JR関係労働者に相応しい賃金水準への到達
「中期労働政策ビジョン(2024-2028)」では、「働きの価値に見合った水準」として、社会水準を意識して設定した必達目標賃金を念頭におき、期中での到達をめざしています。また、必達目標賃金への到達後は、上位目標賃金への到達に向けて取り組み、継続的な賃金水準の維持・向上を図ることとしています。
JR各単組の賃金実態等調査では、上位目標賃金に対して、JR東海ユニオンが全年齢層で到達、JR西労組は55歳ポイントを除いた年齢層で到達しました。また、必達目標賃金に対しては、JR四国労組が50歳ポイントのみで到達、JR九州労組は25歳および40歳から50歳ポイントで到達しました。各単組の実額計は全単組・全年齢層で改善される結果となりました。
上位目標賃金、必達目標賃金の双方について、25歳、40歳、50歳、55歳ポイントで増加し、その他の年齢ポイントで低下しています。その結果、JR東海ユニオンの35歳ポイントおよびJR西労組の25歳から35歳ポイントで上位目標賃金に対して非到達から到達に転じ、JR九州労組の25歳、45歳、50歳ポイントで必達目標賃金に対して非到達から到達に転じました。
グループ労組の賃金実態調査では、上位目標賃金に対して、一般分科会が多くの年齢層で到達、工務、物販分科会が一部の年齢ポイントで到達し、他の分科会はすべての年齢層で非到達となりました。また、必達目標賃金に対しては、一般分科会が全年齢層で到達、工務、物販分科会が多くの年齢層で到達、陸運分科会が一部の年齢ポイントで到達し、他の分科会はすべての年齢層で非到達となりました。
グループ労組については、今年度から目標や調査対象賃金を変更しているため、前年との比較は困難ですが、各分科会の調査結果は全分科会・全年齢層で改善されていると推察できます。
なお、上位目標賃金および必達目標賃金の根拠となる賃金センサスは2023年分であることから、2024年の賃金改善が反映されていません。連合の集計結果から推察すれば、来年度の目標賃金は今年度から3%程度上昇する可能性が高く、2025春闘において相応の賃上げを実現しなければ、現在の水準を維持することは困難となります。
こうした中、各目標賃金への期中での到達を果たし、賃金水準を維持・向上するためには、バックキャストの思考で要求を組み立て、労使が胸襟を開いて議論していく必要があります。
賃上げ要求については、月例賃金にこだわるとともに、生活給として必要な水準を安定的に維持していくためにも、勤務実績見合いの諸手当より、基本給などの毎月定額で支払われる賃金引き上げを強く意識する必要があります。そのうえで、各単組における賃金制度の個別課題の解決を図るための諸手当の改善に取り組むべきです。
2024春季生活闘争では、年度末一時金などにより、企業が労働者と真摯に向き合う姿勢が強まった傾向にありました。相当額の一時金が強いインパクトを与えたものの、臨時に支払われる一時金では賃金水準は変動しないことから、その場しのぎの場当たり的な対応とも受け止められます。社会情勢を踏まえ、賃金・経済・物価の好循環に乗り込むためにも、ベースアップなどによる月例賃金の向上に徹底的にこだわる必要があります。
A 賞与による人財への投資
若年層においては、賞与の与えるインパクトが大きく、少なからず離転職の判断を左右する要因のひとつになっています。
基本的には、退職手当や割増賃金等にも直接影響を与え、長期間にわたって組合員の利益となる月例賃金にこだわることに変わりはありませんが、賞与の与える影響を鑑みると一定の水準で支払われるよう取り組む必要があります。また、離職防止の観点からも、新年度全体の賃金を決定し、向こう1年間の生活設計が立てられるようにすることで、組合員の安心感を醸成することは重要です。
従って、早期決定を念頭に、単組の事情を考慮しつつ可能な限り春闘時期に併せて賞与を求め、決着をめざして取り組む必要があります。
B 意欲高く働き続けることができる多様な働き方の実現
優秀な人財の確保・定着を図る観点から、賃金以外の労働条件を含めた働き方全般について点検し、改善を図ることも重要です。特にフレックスタイム制やテレワークの導入・拡大は、最近の多様な働き方の先進事例として社会でも広く導入されていることから、積極的に推進する必要があります。
また、育児・介護・治療と仕事の両立支援についても、社会情勢を鑑みて積極的に推進するとともに、これまで導入してきた短時間勤務・短日数勤務などの多様な働き方については、特定の事情を抱える人財のみならず、広く一般的に利用できるよう適用拡大を図るべきです。
さらに、女性・高年齢者・社会人・外国人などの採用の拡大や、時代とともに勤労観や家庭観などの価値観に変化が生まれることを踏まえ、業務の効率化・省力化の推進に併せ、JR特有の就労形態である長時間拘束や夜間作業、広域転勤の縮減など、構造的な課題に対して大胆な改革を進めていく必要があります。
(4) JRグループ全体で生み出した付加価値の適正分配による産業内格差の是正
JR産業は、グループ会社や協力会社の支えにより事業運営が成り立っており、JRグループの経営成績はこうした関係者の連帯や協力があってこそ成し得ています。JR7社・グループ各社で経営成績に差異があることは事実ですが、組合員が努力を重ねて経営を支えてきたことに変わりはなく、JR7社・グループ各社の隔てなく、社会情勢とJR各グループの経営成績を踏まえた賃上げ要求を堂々と求める必要があります。
JR発足以降、企業再編を繰り返してグループ会社は変遷してきましたが、労働条件についてはJR各社と一定の格差が生じ、経営体力に差のあるグループ会社は、その格差は拡大しているものと推察できます。2024春季生活闘争の結果を見ても、経営体力の差に応じて賃上げ額にも差が生じています。
経営体力が脆弱だという理由のみをもって賃上げができなければ、格差は広がるばかりです。この間、こうした負の流れに歯止めをかけ格差を是正すべく産業を超えて取り組んできており、JR連合においても、グループ会社が賃上げすることができる環境整備に向けて、適正契約・価格転嫁の推進に取り組んできました。広がり続ける産業内格差を是正し、JR産業全体が発展するためにも、これまで以上に格差是正を意識した取り組みが求められます。
なお、「中期労働政策ビジョン(2024-2028)」で設定したグループ労組の目標賃金は、『産業別・企業規模100〜999人』であり、JR各単組の目標賃金『全産業・企業規模1,000人以上』とも差異があります。賃金水準と目標賃金に差があることも事実ですが、より早期に目標賃金に到達できるよう、これまで以上に意識した取り組みが求められます。