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2018春季生活闘争の基本的な考え方

私たちを取り巻く環境を踏まえた春季生活闘争の構築

私たちを取り巻く環境は、年々経済のグローバル化とともに、より一層不透明さと厳しさを増すことが想定されます。その中で日銀は、物価上昇率2%の目標達成時期を、当初より1年先送りし2019年頃としたものの、同目標を明確に掲げ続けています。また、一昨年9月に「量よりも金利を重視する」政策の枠組みに変更して1年が経過しましたが、米連邦準備理事会(FRB)の量的緩和縮小の決定や欧州・中国の動向、北朝鮮情勢などの地政学的リスクが懸念されており予断を許しません。

一方、消費者物価は原材料価格の高騰による日用品等の値上げや社会保険料率の引き上げ等により上昇基調で推移していますが、実質賃金は減少しており、GDPの約6割を占める個人消費が依然として伸び悩んでいます。実質賃金の減少要因として、物価動向のほかに雇用環境の変化もあります。労働力不足が社会問題化し雇用情勢が好転する中においても、結果として、正社員と比較して賃金が低位に置かれているパート労働者が増加の一途を辿っており、非正規から正規への雇用転換の促進や非正規労働者の処遇改善を図っていく必要があります。

よって、企業業績が最高水準で推移する中においても、多くの労働者が景気回復を実感できておらず、そのことで個人消費も活性化せず、日本の名目GDPは約20年間増加していません。企業収益拡大→賃金上昇→消費拡大→付加価値向上といった経済の好循環を創り出し、日本の国際競争力・経済力を高めるためには、賃金引き上げが不可欠であることは言うまでもありませんし、もはや企業への社会的要請です。そのために政府は、企業に対して法人税実効税率の段階的な引き下げに加え、2018年度与党税制改正大綱において、賃上げ率や設備投資額など一定の要件を満たした企業への税額控除措置を拡充し、積極的な賃上げと設備投資を促しています。企業は今こそ社会的要請に応え、企業の発展を通じて日本社会・経済の発展に寄与するといった使命を果たすべきであり、獲得した資金を重点的に内部留保として蓄積することは許されることではありません。景気回復を本流に乗せ、経済の自律的な成長を実現していくためには、個人消費の回復・拡大による力強い内需の形成を図ることが不可欠であり、そのためにも個人所得の向上が不可欠であることは論を待ちません。

そのためには、月例賃金の向上をはじめとした諸労働条件の改善が不可欠です。よって、2018春季生活闘争においても、この間の取り組みを参考にしつつ、ベースアップを軸とする月例賃金引き上げにこだわった闘いを継続的に展開し、着実に前進を図る必要があります。

JR各社は、昨年7月の九州北部豪雨や9月の台風上陸により、JR四国では予讃線海岸寺〜詫間間で、JR九州では日豊本線、久大本線、日田彦山線の一部区間で甚大な被害・影響が発生しました。また、夏季のJR旅客6社の利用状況は好調であったものの、その後、連続した台風上陸・接近などによって、JR東海、JR西日本を主として甚大な被害・影響が発生しています。第2四半期決算(連結)では、こうした各社・エリアでの自然災害による被害等の影響が色濃く顕れており、通期業績予想と合わせて、JR各社で大きく明暗が分かれました。

一方で、こうした厳しい状況下においてもJR各社では、日夜業務に精励するすべての組合員の着実な業務遂行により、最大の使命である「安全・安定輸送」が支えられています。JR産業は、国鉄改革の経緯から他の産業に類例を見ない歪な年齢構成となっており、急激に世代交代が進む中で、組合員は日々の業務への精励に加え、技術継承や経営基盤の強化に資する効率化施策、コスト削減等に取り組み、鉄道の再生と発展にむけた努力を継続しています。加えて、急増するインバウンド需要への対応や、各社が推進するビッグプロジェクト、東京オリンピック等の将来を見据えた様々な業務にも日夜追われています。そして、JR発足時と比較して輸送量や事業規模、収益等は大幅に拡大した一方、社員数は減少の一途を辿っており、組合員一人ひとりの労働生産性は飛躍的に向上しています。こうした有形無形の組合員の頑張りを通じてJR産業の発展は支え続けられているのです。

そして、JR各社においても、労働力不足を背景とした採用競争の激化で、人材の確保に苦慮しており、採用内定者の辞退やより良い労働環境等を求めての転職などが発生しています。「売り手市場」の雇用情勢の中で、持続的な人材の確保と育成が喫緊の重要課題となっており、持続的に有為な人材を確保できなければ、JR産業に課せられた社会的使命を果たし続けることは困難となります。よって、政府が前述のような企業に対する税制優遇措置等を進めている今こそ、JR各社は人材の確保に対する危機感を持つとともに将来を見据え、獲得した資金を内部留保として蓄積させるのではなく、JR産業の持続的な発展に資する人的投資へ積極的に活用し、人材の確保・定着と企業(採用)競争力の強化を図るべきです。

働き方の総点検・見直しと総合労働条件改善の取り組み

厚生労働省の諮問機関である労働政策審議会は、昨年9月15日、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案(以下、「働き方改革関連法案」という)」の要綱について、「概ね妥当」との結論をまとめ、厚生労働大臣へ答申しました。これにより、今通常国会で「働き方改革関連法案」が提出され、審議が行われることとされています。

同法案では、企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大や高度プロフェッショナル制度の創設など、「働かせ方改革」とも揶揄される法案も含まれており、今後の国会審議を注視していかなければなりませんが、長時間労働の是正を目的とした罰則付き時間外労働の上限規制や勤務間インターバル制度の普及促進、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保(“同一労働同一賃金”等)なども盛り込まれています。加盟各単組は自社の現行制度・運用や業務実態等を改めて点検するとともに、法改正等の趣旨と意義を踏まえ、労使協議を通じて先行的に改善を図っていく取り組みが求められます。そして、罰則付き時間外労働の上限規制の適用猶予となっている業種(自動車運転業務、建設事業等)についても、一般則に近づけるための労使協議を行い、長時間労働の是正にむけた取り組みを進めていかなければなりません。

また、労働時間管理の徹底については、通年闘争としていますが、昨今一部のJR各社において36協定違反が発生している実態等を踏まえ、春季生活闘争において集中して労使協議を行い、法令遵守の徹底を図らなければなりません。そして、JR各社とも、この間、社員数は減少の一途を辿っていますが、それに見合った業務量や働き方の見直しが十分ではなく、結果として一人当たりの業務量だけが増大し、長時間労働が是正されていない実態も散見されています。したがって、労使協議を通じて、要員数と業務量との均衡や要員数と整合した働き方の見直しの必要性について認識を一致させ、安全で健康に働き続けることができる職場環境を構築していく必要があります。

さらに、労働基準法改正により事業者に年休5日の時季指定権が義務化されることを視野に入れ、5日未満者をなくす取り組みを推進することや、5年を超えて反復更新される有期契約労働者の無期転換権が2018年4月から発生することから、正社員登用にむけた制度の構築と雇い止め防止にむけた労使協議を行うとともに、当該労働者への周知も徹底していかなくてはなりません。

そして、労働力不足が社会問題化している現実を直視し、企業の永続的な発展に不可欠な「有為な人材の確保・定着」を労使の重要課題と位置づけ、月例賃金の向上のみならず、賃金以外の労働条件向上や制度改善、とりわけ、この間各年代から強い要請がある「ワーク・ライフ・バランスの充実・強化」に継続して取り組むとともに、60歳以降の再雇用契約社員や契約社員等の非正規労働者と正規労働者間の格差是正、働く者一人ひとりの状況やニーズにあった多様な働き方を選択できる仕組みの構築、仕事に応じた適正な処遇の確保にむけた取り組みも重要になってきます。

2017春季生活闘争においても、加盟各単組において多様化する課題へ対応していくことの必要性が一層広がり、かつ深まったと言えますが、2018春季生活闘争においても、「中期労働政策ビジョン(2014〜2018)」で掲げた到達目標の達成にむけた継続的な取り組みを展開し、すべてのJR関係労働者のあるべき働き方の具現化にむけて、月例賃金の引き上げ要求を基軸としつつ、賃金以外の労働条件項目、即ち、労働時間や休日・休暇制度といった諸労働条件の向上にむけて、単年度の春季生活闘争を丁寧に積み重ねていくこととします。

すべてのJRグループ労働者の処遇改善にむけた取り組みの強化

JRグループの盛衰は、グループ会社の発展に委ねられていると言っても過言ではありません。この間、JR各社は、様々な業種・業態について子会社化し、当初は高年齢者層の雇用の受け皿、グループ会社における技術・技能伝承を目的として、その機能を発揮してきましたが、団塊の世代が大量退職期を迎えるとともに、社会全体の労働力不足も相俟って、JR本体からの人的派遣が困難になると同時に、プロパー社員がグループ会社における貴重な戦力としての地位を築き上げ、JRグループの発展に寄与してきました。

しかし、昨今、労働力不足を背景とした採用競争の激化により、一部のグループ会社では、応募人員が求人数に届かず、また、採用内定者の辞退等により、追加募集を行わざるを得ない事態となっています。さらに、若年退職等、相次ぐ人材の流出により、結果として、業務に必要な要員が整わず、一人あたりの業務量が増加し、日々の業務遂行に支障をきたしています。蓄積された経験や知識、技量が必要とされるJR産業において、このような事態は、安全・安定輸送の観点からも危機的状況です。また、これ以上の労働環境の悪化(連続夜勤・休日出勤等)は、社員の「心身の健康・安全」が脅かされるばかりか、さらなる人材の流出にもつながり、ひいては会社存続の危機へと発展しかねません。よって、JR各単組はこの厳しい現実を直視し、「グループ会社における有為な人材の確保・定着」を喫緊の課題と捉え、JRグループの発展にはグループ会社の発展が不可欠との認識の下、如何にグループ全体の企業(採用)競争力を高め、グループ会社において有為な人材を確保し、雇用の定着につなげるか、そのための労働条件や人事・賃金制度をどのように整備していくかを、胸襟を開いて真剣に議論していく必要があります。

グループ会社で働く仲間の労働条件は、残念ながらJR各社と比較して未だ低位に置かれており、JRグループの発展を支えるすべてのJR関係労働者の「底上げ・底支え」「格差是正」に資する取り組みを強化し、JRグループの企業(採用)競争力を高めることが、2018春季生活闘争に課せられた大きな使命です。連合は、2018春季生活闘争方針において、2016春季生活闘争で方針化した「底上げ・底支え」「格差是正」にむけた取り組みの継続と強化を訴えるとともに、「大手追従・大手準拠などの構造を転換する運動」と「サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正分配」の流れを継続・定着・前進させるため、その必要性を強く社会全体に訴えていくとしています。JR各社とグループ会社間においても、多くの業種・業態で受委託契約に基づいた業務遂行が常となっており、当該取引において、契約単価の見直し・向上等をはじめ、付加価値の適正配分に資する公正取引の実現を図ることが、グループ会社の労働条件の向上や安全をさらに強固に確立していくための原資を生み出すことにつながります。そのことが、グループ会社における有為な人材の確保・定着、技術・技能の維持・向上による安全の確立、および安定した事業運営による収益の確保につながり、ひいてはJRグループへの信頼を高め、発展に寄与するという視点を強く念頭に置かなければなりません。

そのうえで、「JR各社およびグループ会社と複数の階層にわたり業務の受委託関係にある取引企業や、JRグループと資本関係のない関連企業」(以下、「協力会社等」という)も含めて同様の取り組みを積み重ね、すべてのJR関係労働者の「底上げ・底支え」「格差是正」を図っていく取り組みも、JRグループ全体の将来をより一層確固たるものとし、発展させていくためには必要不可欠です。

2018春季生活闘争では、こうした視点と2017春季生活闘争の成果と課題を踏まえ、JR各社はもとより、グループ会社や協力会社等で働くすべてのJR関係労働者の諸労働条件向上にむけて、より一層の取り組み強化を図り、従来以上に「底上げ・底支え」「格差是正」の実現を全面に押し出した闘いを展開します。